(見方💡)
コスパ : 価格に対しての満足度
情報量 : ページ数や載ってる専門情報量(物理量)
最新/唯一性 : 他の本には載ってない様な新しさがあるか?
載ってる情報そのものが古くないか?
読みやすさ : 本の構成やデザインが見やすいか?(写真・図・表)
分かりやすさ : 頭に入りやすい内容か?
概要
”建築設備のトラブル・不具合”はどう解決したらいいの?
何年か建築設備にふれていると、必ず直面する大きな課題のひとつです。
よく言われるのが、建築設備は「何も感じない」のが1番良いとされています。
逆に、「何か気になるなぁ」「不快だなぁ」と感じたら、トラブル・不具合のおそれがあります。
本書は、具体的なトラブル事例”41項目”を例に、トラブル解決までの”考え方・道筋の立て方”を
解説してくれる本となっています。
本の構成
本の構成は、大きく前半の[基礎編]と後半の[実践編]に分かれています。
[基礎編]では、トラブル解決に向けた”調査のやり方””その結果の分析手法”を解説しています。
[実践編]では、41項目の実際に起きた事例を元に、”特性要因図”を用いた”筋書きの立て方”を
メインに紹介しています。
[基礎編]不具合発生時の調査方法 (調査の手順、配管腐食・劣化調査上の留意点、電気設備トラブルの主な要因分類) [実践編]トラブル集 <空調> 01. エアコンの圧縮機がロックして空調ができなくなった 02. 小型貫流ボイラの伝熱管にき裂が入った 03. 冷房が効かない (フレアナットの割れによる冷媒漏えい) 04. 停止中のビルマルチ室内機から漏水した 05. バイパス弁が全開してポンプが停止した 06. 冷凍空調機の起動時に高圧カットが作動する 07. 変風量方式への改修後、室温にクレーム 08. 夏季、天井仕上げ材が結露してかびが発生した <衛生> 09. スプリンクラー巻出しフレキ感が破断し漏水した 10. ときどき、節水大便器の封水が切れる 11. 高置水槽近辺メータブエア溜まり 12. 大便器洗浄弁同時使用過多 13. 給湯系統のエア溜まりにより湯が出ない 14. 便器より排水が噴き出した 15. 給湯計量不能 <電気> 16. 高圧ケーブルの絶縁劣化 17. 動力端子接続部の過熱による停電発生 18. 空調用電動機の異音発生 19. 電力量計の誤結線による異常計量 20. 雷雨の翌朝、一部の空調機と外調機の制御が不能になった 21. 絶縁監視装置による漏電注意警報の多発 <腐食> 22. 給水栓から黒色の異物が流出した 23. 土中埋設管から水が濡れた 24. 黄色い水が出る(管端防食継手の腐食) 25. パイプシャフトより異臭(通気管の腐食) 26. 新設した温水管が漏水した(開放式温水系統における亜鉛めっき鋼管の腐食) 27. ステンレス鋼鋼管溶接部から漏水した 28. 給湯用銅配管から漏水した 29. 新設した空調機器の銅コイルから漏水した 30. 蒸気コイルから漏えい 31. パッケージエアコン室内機の銅コイルから漏えいした 32. ステンレス鋼鋼管に割れが発生した 33. 排水系統は微生物の温床 <騒音> 34. ウォータハンマ(水撃騒音) 35. 昼時だけレストランの床スラブが異常振動する 36. 音楽練習室の音が思わぬところから漏れ伝わる 37. 高層ホテルの機械室の運転音がうるさい <劣化> 38. 樹脂製継手が割れた 39. 耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管が割れた 40. プール温水配管から漏水した 41. スラブ下埋設の排水横主管が圧密沈下で割れて漏水した
良かった点
「読みやすさ」「分かりやすさ」を ☆☆☆3点としました。しかし、
本書の良さは、評価項目では表しづらいのでいつもと違う視点で説明します。
良かった点 ① 単なるQ&Aではなく、”調査の方法” ”道筋のたてかた” ”調査結果の分析手法”などのツール・手法を紹介しているので、 どんなトラブ解決にも”応用”できる ② ”特性要因図”のつくりかた、活用の仕方が学べる
①つ目について、トラブルの本質上、「これを読めば必ず解決できる!」という
ゲームの攻略本みたいにはなっていません。
ただ、ゲームを攻略する上での”コツ・心得”みたいなものは存在するので、
そういった”解決手法”に重きを置いた点です。
そういった類似本はあまりなかったので、貴重な情報になっていると思います。
②つ目は、”特性要因図”を活用して、原因を探る方法が身に付きます。
「原因と要因の違いは?」「原因は1つとは限らない?」ということも勉強することができます。
いまいちだった点
「コスパ」と「情報量」を ☆☆2点としましたが、これにも理由があるので説明します。
いまいちだった点 ① 掲載されている”事例”をメインで知りたい方は注意が必要! 同じ現象でも必ず同じ原因とは限りません。 ② 掲載されている”事例”が少しマニアックなので、普段あまり 直面しないようなことが多い (すぐに役にたつ!タイプではない)
いまいちだった点、というよりは”注意事項”になってしまっています。
上にも書いたとおり、この本は「じっくり時間と経験をかけて、身に付く・ためになる」タイプです
「今すぐ役にたてたい!」「目の前のトラブルをすぐどうにかしたい!」と思って
読んでしまうと、「あれ?思ったのとちょっと違うな」となってしまうかもしれません。
まとめ
”トラブル解決マニュアル”というテーマで、
具体的な手法・ストーリーの立て方などを学べる本でした。
特に[基礎編]が、この本の根幹部分になっているので、
私のおすすめは[実践編]よりも[基礎編]を中心に読むことをおすすめします。
感想と独り言
今回のテーマである「トラブル解決」は、本当に難しいテーマだと思います。
本書にもコメントがありますが、「解決できない事例」「対処療法しかない事例」もありますし、
自分1人の力では、まったく力が及ばない世界です。
「その分野専門の調査会社」「その分野に長けた熟練経験者」「調査に協力いただく建物管理者」
いろんな人とうまくコミュニケーションをとらなければならない、それ故の難しさがあります。
そして、本書を読んで強く”共感・納得”したのが、
「現象の原理・法則を理解しないといけない」ということです。
「エアコンはなぜ冷えるのか?」「水ってどういう性質?」「音の伝播はどういう原理?」
など、起きている現象を理解しないとその原因にたどり着けないのです。
このあたりのHow To 手法は、建築設備に限らず、
あらゆる分野も共通してそうな内容な気がしました。
気になっ方は是非手にとってみてください。