<書籍>建築設備の「なぜ」がわかるトラブル解決マニュアル

建築設備の専門書
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基本データ

 タイトル  : 建築設備の「なぜ」がわかる トラブル解決マニュアル

著者     : 一般財団法人 建築設備技術者協会[編]

出版社    : オーム社

発売年月   : 2016年3月25日

コスパ    : ★ ★ ☆ ☆ ☆

情報量    : ★ ★ ☆ ☆ ☆

最新/唯一性  : ★ ★ ★ ☆ ☆

読みやすさ  : ★ ★ ★ ☆ ☆

わかりやすさ : ★ ★ ★ ☆ ☆

 (見方💡)
 コスパ    : 価格に対しての満足度
 情報量    : ページ数や載ってる専門情報量(物理量)
 最新/唯一性 : 他の本には載ってない様な新しさがあるか?
           載ってる情報そのものが古くないか?
 読みやすさ   :  本の構成やデザインが見やすいか?(写真・図・表)
 分かりやすさ :  頭に入りやすい内容か?

概要

”建築設備のトラブル・不具合”はどう解決したらいいの?

何年か建築設備にふれていると、必ず直面する大きな課題のひとつです。

よく言われるのが、建築設備は「何も感じない」のが1番良いとされています。

逆に、「何か気になるなぁ」「不快だなぁ」と感じたら、トラブル・不具合のおそれがあります。

本書は、具体的なトラブル事例”41項目”を例に、トラブル解決までの”考え方・道筋の立て方”を

解説してくれる本となっています。

本の構成

本の構成は、大きく前半の[基礎編]と後半の[実践編]に分かれています。

[基礎編]では、トラブル解決に向けた”調査のやり方””その結果の分析手法”を解説しています。

[実践編]では、41項目の実際に起きた事例を元に、”特性要因図”を用いた”筋書きの立て方”

メインに紹介しています。

 [基礎編]不具合発生時の調査方法
  (調査の手順、配管腐食・劣化調査上の留意点、電気設備トラブルの主な要因分類)
 [実践編]トラブル集
  <空調>
  01. エアコンの圧縮機がロックして空調ができなくなった
  02. 小型貫流ボイラの伝熱管にき裂が入った
  03. 冷房が効かない (フレアナットの割れによる冷媒漏えい)
  04. 停止中のビルマルチ室内機から漏水した
  05. バイパス弁が全開してポンプが停止した
  06. 冷凍空調機の起動時に高圧カットが作動する
  07. 変風量方式への改修後、室温にクレーム
  08. 夏季、天井仕上げ材が結露してかびが発生した
  <衛生>
  09. スプリンクラー巻出しフレキ感が破断し漏水した
  10. ときどき、節水大便器の封水が切れる
  11. 高置水槽近辺メータブエア溜まり
  12. 大便器洗浄弁同時使用過多
  13. 給湯系統のエア溜まりにより湯が出ない
  14. 便器より排水が噴き出した
  15. 給湯計量不能
  <電気>
  16. 高圧ケーブルの絶縁劣化
  17. 動力端子接続部の過熱による停電発生
  18. 空調用電動機の異音発生
  19. 電力量計の誤結線による異常計量
  20. 雷雨の翌朝、一部の空調機と外調機の制御が不能になった
  21. 絶縁監視装置による漏電注意警報の多発
 <腐食>
  22. 給水栓から黒色の異物が流出した
  23. 土中埋設管から水が濡れた
  24. 黄色い水が出る(管端防食継手の腐食)
  25. パイプシャフトより異臭(通気管の腐食)
  26. 新設した温水管が漏水した(開放式温水系統における亜鉛めっき鋼管の腐食)
  27. ステンレス鋼鋼管溶接部から漏水した
  28. 給湯用銅配管から漏水した
  29. 新設した空調機器の銅コイルから漏水した
  30. 蒸気コイルから漏えい
  31. パッケージエアコン室内機の銅コイルから漏えいした
  32. ステンレス鋼鋼管に割れが発生した
  33. 排水系統は微生物の温床
 <騒音>
  34. ウォータハンマ(水撃騒音)
  35. 昼時だけレストランの床スラブが異常振動する
  36. 音楽練習室の音が思わぬところから漏れ伝わる
  37. 高層ホテルの機械室の運転音がうるさい
 <劣化>
  38. 樹脂製継手が割れた
  39. 耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管が割れた
  40. プール温水配管から漏水した
  41. スラブ下埋設の排水横主管が圧密沈下で割れて漏水した
 

良かった点

「読みやすさ」「分かりやすさ」を ☆☆☆3点としました。しかし、

本書の良さは、評価項目では表しづらいのでいつもと違う視点で説明します。

良かった点
① 単なるQ&Aではなく、”調査の方法” ”道筋のたてかた” 
  調査結果の分析手法”などのツール・手法を紹介しているので、
  どんなトラブ解決にも”応用”できる
② ”特性要因図”のつくりかた、活用の仕方が学べる

①つ目について、トラブルの本質上、「これを読めば必ず解決できる!」という

ゲームの攻略本みたいにはなっていません。

ただ、ゲームを攻略する上での”コツ・心得”みたいなものは存在するので、

そういった”解決手法”に重きを置いた点です。

そういった類似本はあまりなかったので、貴重な情報になっていると思います。

②つ目は、”特性要因図”を活用して、原因を探る方法が身に付きます。

「原因と要因の違いは?」「原因は1つとは限らない?」ということも勉強することができます。

いまいちだった点

「コスパ」と「情報量」を ☆☆2点としましたが、これにも理由があるので説明します。

いまいちだった点
① 掲載されている”事例”をメインで知りたい方は注意が必要!
  同じ現象でも必ず同じ原因とは限りません。
② 掲載されている”事例”が少しマニアックなので、普段あまり
  直面しないようなことが多い (すぐに役にたつ!タイプではない)

いまいちだった点、というよりは”注意事項”になってしまっています。

上にも書いたとおり、この本は「じっくり時間と経験をかけて、身に付く・ためになる」タイプです

「今すぐ役にたてたい!」「目の前のトラブルをすぐどうにかしたい!」と思って

読んでしまうと、「あれ?思ったのとちょっと違うな」となってしまうかもしれません。

まとめ

”トラブル解決マニュアル”というテーマで、

具体的な手法・ストーリーの立て方などを学べる本でした。

特に[基礎編]が、この本の根幹部分になっているので、

私のおすすめは[実践編]よりも[基礎編]を中心に読むことをおすすめします。

まとめ

 「いつもトラブル解決がうまくいかなくて悩んでいる」

  「本や説明書にのってない不具合」に悩んでいる人にオススメのHow to 本

 ”事例の解説目当て”で購入検討の方は注意が必要

  (今すぐこれで完璧に解決!とはならない可能性が高い)

 「特性要因図」を用いた、具体的な解決までの道のりを示してくれる本

感想と独り言

今回のテーマである「トラブル解決」は、本当に難しいテーマだと思います。

本書にもコメントがありますが、「解決できない事例」「対処療法しかない事例」もありますし、

自分1人の力では、まったく力が及ばない世界です。

「その分野専門の調査会社」「その分野に長けた熟練経験者」「調査に協力いただく建物管理者」

いろんな人とうまくコミュニケーションをとらなければならない、それ故の難しさがあります。

そして、本書を読んで強く”共感・納得”したのが、

「現象の原理・法則を理解しないといけない」ということです。

「エアコンはなぜ冷えるのか?」「水ってどういう性質?」「音の伝播はどういう原理?」

など、起きている現象を理解しないとその原因にたどり着けないのです。

このあたりのHow To 手法は、建築設備に限らず、

あらゆる分野も共通してそうな内容な気がしました。

気になっ方は是非手にとってみてください。

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