<書籍>地中熱ヒートポンプシステム 改訂2版

建築設備の専門書
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基本データ

タイトル   : 地中熱ヒートポンプシステム 改訂2版 

著者     : 北海道大学環境システム工学研究室[編]

出版社    : オーム社

発売年月   : 2020年10月20日

定価金額   : 3,200円+税

コスパ    : ★ ★ ★ ☆ ☆

情報量    : ★ ★ ★ ☆ ☆

最新/唯一性   : ★ ★ ★ ★ ★

読みやすさ  : ★ ★ ★ ☆ ☆

わかりやすさ : ★ ★ ★ ☆ ☆

 (見方💡)
 コスパ    : 価格に対しての満足度
 情報量    : ページ数や載ってる専門情報量(物理量)
 最新/唯一性 : 他の本には載ってない様な新しさがあるか?
           載ってる情報そのものが古くないか?
 読みやすさ   :  本の構成やデザインが見やすいか?(写真・図・表)
 わかりやすさ :  頭に入りやすい内容か?

概要

地中熱ってどうやって設計するの??

2007年に発売した第1版より、13年ぶりの”改訂第2版”となり、

”地中熱ヒートポンプシステム”について解説した本となります。

「地中熱ヒートポンプシステムとは何か?」をわかりやすく理解できる教科書として、

また実務においても計画・設計がある程度できるように、設計フローや設計事例を紹介。

同時に、地質学・地盤工学の基礎や地下水利用調査に関する情報も掲載されています。

「地中熱利用」とは、「未利用エネルギー」ともいわれ、

最近ではZEB(Net Zero Energy Building)にも多く採用されてる技術となります。

1年間を通して”温度変化の少ない”(恒温性)が最大の特徴であり、

空調のための”冷温水の冷温熱源”として利用されます。

表紙では「地球温暖化対策の切り札」と表現していて、

”地中熱のポテンシャルの高さ”と”導入がまだ進んでいない現状”を示唆しているようですね。

はしがきでは、

『地中熱ヒートポンプシステムの基礎や計画・設計方法の理解に貢献し、

それが再生可能エネルギー熱の一つである地中熱利用の普及へとつながり、

地球温暖化防止の一助となることを期待する。』

著者のコメントがされています。

本の構成

序章として、地中ヒートポンプの基礎知識

第2~5章からは、地中側から順々にシステムを追っていく形となり、

1次側(地質・地下水)→中間部(熱交換器)→ 中間部(熱源+補機)→二次側(冷暖房システム)

となっています。

第6章からは、5章までに学んだ基礎知識編を活かして実践編へうつり、

事前調査→システムの設計→評価と将来展望→実施例 といった構成になります。

1章 地中熱ヒートポンプシステムの基礎知識
 1-01 ヒートポンプ利用の意義
 1-02 地中熱利用
 1-03 地中熱ヒートポンプシステムの基本構成
 1-04 地中熱ヒートポンプシステムの特徴
 1-05 地中熱ヒートポンプシステムの適用用途と範囲
 1-06 地中熱ヒートポンプシステム導入の効果
2章 地質・地下水
 2-01 わが国の地質・地下水
 2-02 地質
 2-03 地下水
 2-04 地盤中の熱移動
 2-05 地質の物性
3章 地中熱交換器
 3-01 地中熱交換器の分類
 3-02 ボアホール方式
 3-03 基礎杭等構造物利用方式
 3-04 Uチューブ(地中熱採熱管)
 3-05 水平方式
 3-06 一次側配管
 3-07 オープンループシステム
4章 熱源機(ヒートポンプ)と補機
 4-01 ヒートポンプの基礎知識
 4-02 地中熱ヒートポンプ
 4-03 熱源補機
5章 冷暖房システム
 5-01 建物と設備の関わり
 5-02 住宅用システム
 5-03 業務用システム
6章 地中熱利用のための事前調査
 6-01 地中熱利用システム導入にあたって
 6-02 資料調査
 6-03 地盤の有効伝導率の推定
 6-04 地下水流速(ダルシー流速)の推定
 6-05 井戸調査
 6-06 地中熱利用ポテンシャル
7章 地中熱ヒートポンプシステムの設計
 7-01 設計のフロー
 7-02 システムの選定
 7-03 クローズシステムの設計手法
 7-04 地中熱ヒートポンプ設計ツールとGround Club
 7-05 オープンループシステムの設計手法
8章 地中熱ヒートポンプシステムの評価と将来展望
 8-01 地中熱ヒートポンプシステムに求められる条件
 8-02 経済性および環境性の評価
 8-03 将来の展望
付録 地中熱ヒートポンプシステムの実施例 

良かった点

「最新/唯一性」は ☆☆☆☆☆ 5点満点です。

調べてみると2021年現在では、地中熱関連書籍は”数冊”ありますが、

ここまでしっかりと”基礎から実務まで網羅している”書籍は他に無かったので、

唯一性として高評価としています。

良かった点>
① 基礎知識、技術動向、政策、将来性、国内外の導入状況がわかる

② シミュレーションソフトの紹介、地盤のデータ入手方法など、
  実務目線”で紹介・解説をしてくれているのが有難いポイント
 ネットや一般書籍では知り得ない、地中熱のデータがたくさんつまってる

いまいちだった点

「コスパ」「情報量」「見やすさ」「わかりやすさ」 すべて ☆☆☆ 3点としました。

特別不満な点はなく、標準的なボリューム・クオリティだと思います。

いくつか気になった点や今後の希望をコメントします。

<いまいちだった点>
① 十分見やすいけれど、カラーの方が見やすいと感じる写真・グラフがある
  (オールモノトーン印刷が残念)

② 実施例が5件(5用途)しかないので、もうすこし充実していると良かった

③ この本を読んでも尚、1人称で実務をおこなうのは難しい部分があるので、
  関連メーカーや設計・施工を請け負う会社紹介があれば親切だったと思う

まとめ

「地中熱利用に興味がある」「地中熱を採り入れた設計をしたい」

そんな方には必携となるような、初心者からベテランまで問わず手に取れる良書だと思います。

まとめ

① この1冊で地中熱ヒートポンプの概要がつかめる唯一の本

② 基礎知識からシステムのイロハ、実施例・将来展望まで、丁寧に解説

 写真・イラスト・グラフが多数挿入されていて見やすい本構成

感想と独り言

本書はとてもわかりやすかったのですが、

地中熱の設計は、あらためて”複雑で難しい”と私は感じました。

理由は想像していたよりも、”種類(パターン)が多い”ことと、

普段は深く考えていなかった”熱伝導”の知識が多く必要だったところです。

特に種類は、「システムの種類」「熱交換器の種類」「二次側利用との調整」「地盤の種類」

それらをバランスよく組み合わせて考えなければなりません。

地中熱利用をメインとして考えるか、補機として少しでも利用できれば良いと考えるか

によって大きく変わってくるのです。

しかしながら、これだけ注目されている技術なのに、

ガイドとなる設計指南書が今まで無かったので、この本の存在意義はとても高いと考えます。

今後はますます発展して、さらなる専門書が登場してくることを期待したいです。

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