(見方💡)
コスパ : 価格に対しての満足度
情報量 : ページ数や載ってる専門情報量(物理量)
最新/唯一性 : 他の本には載ってない様な新しさがあるか?
載ってる情報そのものが古くないか?
読みやすさ : 本の構成やデザインが見やすいか?(写真・図・表)
わかりやすさ : 頭に入りやすい内容か?
概要
Net Zero Energy Building ”ZEB”
今ではニュース番組の特集や新聞などでも聞かれるようになった建築用語。
建築業界では、省エネ性能を示す建物として”高いブランド力”を誇れる言葉となっています。
ZEB(ゼブ)の意味を簡単に説明すると、
『”創エネ+省エネ”を合わせて建物で消費する年間一次エネルギーの
収支を”ゼロ”にすることを目標とした建築物』のことです。
ZEBを実現するためには、たくさんの省エネ技術導入、再生可能エネルギーの採用、
エネルギーロスの少ない合理的な建築構造、が必要になってきます。
そして、それらの要素をとり揃えるためには、
①高度に計算された設計技術 ②実現を可能とするための建設投資(コスト) が不可欠です。
①と②の条件を両方を満たすのは難しく、
特に①の”How To”の要素があまり世間に示されておらず、
各社が”手さぐり状態”で中々導入が進まない背景があったのではないかと思います。
本書は、空気調和・衛生工学会の「ZEB計画指針検討小委員会」のメンバーと、
ZEB建築を実際に設計・施工した執筆者達による、”業界初のZEBメソッド本”となります。
メソッド【method】:「目的を達成するために決められたやり方。方法。方式」
今まで解説されてこなかった、”ZEB建築を達成するためのつくりかた” について、
またそれだけでなく、「そもそもZEBの定義は?」「ZEBの動向は?」
「具体的にどういう手法があるの?」 これらの疑問を解決できる1冊となっています。
本の構成
第1章は、ZEBの動向・背景について、
第2章は、ZEBの定義と評価方法について書かれています。
そして第3章からが、メソッドにあたる手法の紹介・解説。
さらにそれらを活用した事例集として第4章では”18事例”が掲載されています。
最後の5章では、紹介した事例や最近の動向より今後の展望・課題について明記されています。
第1章 ZEBの動向 1.1 米国の建築物省エネルギーとZEB動向 1.2 英国の動向 1.3 EU諸国の動向 1.4 アジア諸国の動向 1.5 日本の動向 第2章 ZEBの定義と評価方法 2.1 ZEBの意義 2.2 ZEBの定義 2.3 ZEBの評価方法 2.4 ZEBの評価基準 第3章 ZEBのデザインメソッド 3.1 ZEBへのアプローチ 3.2 屋外環境を適正化する 3.3 屋内環境を適正化する 3.4 負荷を抑制する 3.5 自然エネルギーを利用する 3.6 未利用エネルギーを活用する 3.7 設備・システムの高効率化をはかる 3.8 再生可能エネルギーを導入する 3.9 エネルギーマネジメントを実施する 第4章 ZEBの最新事例 4.1 先進事例の概要 4.2 雲南市役所新庁舎 4.3 清水建設本社ビル 4.4 大成建設ZEB実証棟 4.5 KTビル 4.6 竹中工務店東関東支店 4.7 大林組技術研究所本館 4.8 東京大学21KOMCEE 4.9 ダイキン・テクノロジー・イノベーションセンター 4.10 関西電力南大阪営業所 4.11 東京ガス立川ビル 4.12 三建設備工業つくばみらい技術センター 4.13 エネフィス九州 4.14 新日本空調工学センター 4.15 新菱冷熱工業本社ビル 4.16 秋田市新庁舎 4.17 生永の家”森の中のオフィス” 4.18 大成サッポロビル 第5章 ZEBの展望 5.1 ZEBの位置づけ 5.2 産業としてのZEB 5.3 全体最適化 5.4 技術の継承
良かった点
「最新/唯一性」は ☆☆☆☆☆ 5点満点、
「読みやすさ」「わかりやすさ」も ☆☆☆☆4点の高評価としました。
<良かった点> ① いまいちわかりづらい”ZEBの定義・種類・評価方法”を丁寧解説、 ZEB建築を知るための導入書として最適な1冊 ② 18件の先進事例紹介は1件あたりのページ数は少ないものの、 ”フルカラー印刷”(写真・グラフ・イラスト)となっており、 各建築の特徴・工夫点がよくわかる構成 ③ ”他の書籍には載ってない” ZEB情報・技術手法をこの1冊で学べる
いまいちだった点
「コスパ」「情報量」は、標準ボリュームのため、 ☆☆☆ 3点としました。
特別低評価な項目はありませんが、下記の点が気になるところでした。
<いまいちだった点> ① 最新事例紹介のページ以外は、すべてモノクロ印刷 ② 最新事例の1件あたりもっと情報量がもっと欲しかった (基本は見開き1ページ、多い案件で見開き2ページ) ③ コミッショニング、運用段階でのメソッドがあまり無い
まとめ
”業界初のZEBメソッド本”ということで、最新事例が18件も集まった書籍という点だけで
とても有益な情報本になっていると思います。
<まとめ> ① ZEB実現のための最先端の省エネ建築(技術)・流行がこの1冊で学べる ② そもそもZEBってなんなのか? 海外の流行から日本の定義付までわかる ③ 最新事例紹介は18件、フルカラーページで見やすい構成
感想と独り言
冒頭でかいたとおり、”ZEB建築”は省エネ建築として、”最高のブランド力”をもつので
設備設計者としては憧れがあります。
この本では18項目もの事例が集まっているので、
・なんなくこの省エネ技術は共通でつかってるなぁ
・「会社独自の特許技術」などの工夫・差別化をしている
などが読み取れます。
ただし、見開き1~2P分の紹介ですので、正直なところ
・何がどれだけZEBに寄与しているか、
・計画当初に見込んでて実際取止めになった技術
・運用段階でZEBが達成できてるか
までは分からないです。(しょうがないことですが)
ですので、あくまで流行やZEBの概念をつかむのに最適な書籍になっているのでは
ないかと思いました。興味をもった方は是非、手に取ってみてください。