タイトル : 見る・使う・学ぶ 環境建築設計論
著者 : 一般社団法人 日本建築学会[編]
出版社 : 技報堂出版
発売年月 : 2019年7月5日
定価金額 : 3,400円+税
コスパ : ★ ★ ★ ☆ ☆
情報量 : ★ ★ ★ ☆ ☆
最新/唯一性 : ★ ★ ★ ★ ★
読みやすさ : ★ ★ ★ ★ ☆
わかりやすさ: ★ ★ ★ ★ ☆
(見方💡)
コスパ : 価格に対しての満足度
情報量 : ページ数や載ってる専門情報量(物理量)
最新/唯一性 : 他の本には載ってない様な新しさがあるか?
載ってる情報そのものが古くないか?
読みやすさ : 本の構成やデザインが見やすいか?(写真・図・表)
わかりやすさ : 頭に入りやすい内容か?
概要

環境建築を「見る」「使う」「学ぶ」
「見る」:目から入る情報に重点を置いた「見る」という基幹行為
「使う」:環境技術者が設計のビッグデータを如何に「使う」か
「学ぶ」:種々の新しい事実・現象をどう「学ぶ」か
3つ視点から建築を紐解く、非常に面白いコンセプトの書籍です。
また本書では、”設計行為”に着目して、「要素技術の統合」という視点から
作品別にその”設計プロセスや評価”について論じています。
もう少しかみ砕くと、建築は単純要素の足し算では無く、
あらゆる要素が複合的かつ掛け算の様に化学反応を起こすため、
それぞれの影響要素が何なのか?どういう結びつきをしているか?
という事を主眼に置いて解説している、というコンセプト。
序文より、本書の読者対象は、
『”若くて活きのいい” デザイナー・環境設備設計者・環境研究者と大学院生』とのこと。
人それぞれに高い感受性をもって読み取って欲しいという願いなのでしょう。
本の構成
本書の構成はいたってシンプルです。
各事例建物ごとに「見る」「使う」「学ぶ」の3視点から、解説しています。
<目次> 北見信用金庫紋別支店 押上駅前自転車駐車場 関東学院大学 建築・環境棟(5号館) ROKI Global Innovation Center みんなの森 ぎふメディアコスモス クールツリー 聴竹居 TOTOミュージアム 第1章 コープ共済プラザ 第2章 YKK80ビル 第3章 NTTファシリティーズ新大橋ビル 第4章 東京スクエアガーデン 第5章 清水建設本社ビル 第6章 大林組技術研究所 本館 テクノステーション 第7章 竹中工務店東関東支店ビル 第8章 大成建設技術センターZEB実証棟 第9章 ダイキンTIC 第10章 ヤンマー本社ビル 第11章 あべのハルカス 第12章 雲南市役所新庁舎
良かった点
「最新/唯一性」は ☆☆☆☆☆5点満点
「読みやすさ」「わかりやすさ」は ☆☆☆☆4点 で高評価としました。
<良かった点> ① 環境建築の作品ごと、3つの視点から、設計者の”工夫と知恵”を学べる ② 「学ぶ」では運用段階で得られたデータから、当初の計画予想と比べて どういう結果となったか、運用改善をどう図ったか、貴重な情報を学べる ③ ただの竣工データベースでは無く、生きたデータ・情報がわかる
本書に載っている建築作品たちは、建築設備業界の中では有名なビル・建物ばかりです。
省エネ大賞などの賞を受賞したり、ZEB建築として学会発表されているものなど。
いわば省エネ建物のオールスターたちが集っているイメージ。
ですので、「あぁ、この建物ならだいたい知ってる」という方もいるかと思います。
しかし、本書はただ単に、
”採用した省エネ技術を羅列して紹介”しているものではありません。
ここが、本書の最大のポイントだと私は感じました。
すべての作品では無いですが、一部”座談会”という設計者のインタビューコーナーがあり
本書は「設計者の意図・コンセプト・採用背景」などが垣間見えるのが良い所でした。
また、「使う」「学ぶ」では実際に入居者がどのように運用を行ったか、
その結果はどうだったか?意図通りだったか?運用改善を行ったか?
かなり貴重なデータ(生きたデータ)を学べるところが
他書に無い良い所だと評価しています。
いまいちだった点
「コスパ」「情報量」は☆☆☆ 3点としました。
特別不満はありませんでしたが、少し気になった点や願望をコメントします。
<いまいちだった点> ① 最新事例ばかりなので、カラーページがもっと欲しかった。 (冒頭のみカラー) ② 設計者の“座談会コーナー”は全作品で取り入れてほしかった (一部の作品のみ) ③ イラストやシステム図などはもっと大きいサイズでみたかった (書籍サイズを大きくして欲しかった)
ちょっと欲張り過ぎな願望かもしれませんが、
とても良い書籍だったために、「もっと知りたい・もっと見たい」
という気持ちがでてきてしまいました。
本書は第3弾ということなので、第4弾に期待です。
まとめ
”最新環境建築” ひとつの作品に対して、いろんな角度から丁寧に解説をしている
今までにあまり無かったタイプで貴重な書籍ではないでしょうか。
<まとめ> ① 設計者の"工夫・知恵"を3つの視点から感じ取れる、斬新な紐解き ② 最新省エネ技術紹介だけでなく、それらの“運用・運用改善”がみられる ③ 写真・システム系統図・グラフなどが多数あり、みやすいページ構成
感想と独り言
省エネ建築や技術を紹介する書籍はたくさんありますが、
そのなかでもお気に入りの一冊です。
それぞれの作品ごとに色々な考えがあって、得るものがたくさんありました。
最先端建築なので、純粋に真似をすることは困難ですが、
(技術的にもコスト的にも)
「こういう考え方もあるのか」というヒントや気づきを
得るのにはとても良い教材と感じました。
興味をもった方は是非、手に取ってみてください。